ふたつの旅路~『できることならスティ-ドで』感想~

ふたつの旅路

~『できることならスティ-ドで』感想~


※本来なら『STORY』の感想を綴るシリーズ(なんじゃそりゃ)ではあるが、私個人的な理由によりこちらを先に。

ネタバレあるかもなのでご注意ください。


 『できることならスティ-ドで』もとは「小説トリッパー」で連載されたもの。だが、私は読み始めたのが遅く、読めなかったものもあって悔しい思いをしていた。

(中古でもプレミア化してて嘆いた)

 そこで、「初回から最後までまとめて1冊の本になる」と聞いて嬉しかった。

思わず叫んだしガッツポーズした←

(すぐあらゆる購入サイトを調べまくり注文したのは言うまでもない)

 連載されたものだからか、ひとつひとつのエピソードが短く、サクサクと読めた。

 また、感想をまとめるため付箋を貼りメモをとりながら読み進めていたのだが、気になるポイントが多すぎて気づけば付箋だらけに。それぐらい興味深い1冊だった。

(その大量の付箋が活かされているのかはノーコメントでよろしくお願いしたい)(は?)

 


 読後1番に思ったのは、「こんなに人間くさいエッセイ読んだの初かもしれない」「こんなに人間くさい人いる??」ということ。

 著者、加藤シゲアキさん(以下シゲさん)は、アイドルであるが、確かに「ひとりの人間」だった。

 祖父が亡くなってから「もっと生前に話しておけばよかった」と後悔したり。気になることがあればすぐ調べてしまう好奇心旺盛なところだったり(私も似たような性格をしているのでめっちゃ分かりみ深い)かと思えば社会情勢について考えたり、壁にぶち当たって苦悩したり。そして亡きジャニーさんのことを考えて涙を流し、自分のことも振り返る。

 考えてみれば当たり前なのだが、シゲさんは「ひとりの人間である」と改めてそう思った。

 芸能人の中にはそういうのを見せたくない人もいるだろう。そんな中で我々にそういうところをさらけ出してくれていることに感謝したい。ありがとう。

そんな人間くさいところに勝手ながら親近感を抱くし応援したくなる。

 

 どの「trip」も好きなのだが、思い入れがあるのは「岡山」や「浄土」である。

 私は、昨年の冬に父方の祖母を亡くしている。両話を読んでその父方の祖母のことを思い出し、悲しむシゲさんの心情がその時の私の気持ちに似ており泣いてしまった。

シゲさんのおじいさんは、最後でもシゲさんのことを少しではあるが認識していた。

だが、私の父方の祖母は認知症を患っており、最期の方には私のことはおろか、息子である父のことも忘れてしまっていた。

 分かってはいたけどやはりショックを受けたこと、認知症について知っていたもののいざ自分の身内がそうなったのを目の当たりにし、その辛さを改めて感じた。思い出すのは難しいことは分かっていたが、できるならもう一度名前を呼んで欲しかった。

 祖母は春を目前に控えた冬の終わり、静かにあの世に旅立った。

 生前知らなかったことも多かったのだな、と祖母の葬式で分かった。

戦中に友人たちと青春を過ごしたこと、集団就職で愛知の瀬戸市にいたこと。知らないことばかりでびっくりした。

 それが本人の口ではなく、神道祝詞神道は葬式の際に、伝記のように故人の生まれてから亡くなるまでを語る)からだというのもなんともいえないのだけど。

「知りたかった」「もう少し話したかった」と後悔するも、もう故人は生き返らないし時間は戻らない。だから故人には見守っていて欲しい。「一生懸命生きているんだね」って笑っていて見守っていてほしいと思っている。そしていつかは夢枕にでも遊びに来て欲しい。

 


…と、話がぶれてしまいましたね。

『できることならスティ-ドで』に話をもどしましょう。

 

 掌編小説もとても面白かった。ネタバレになるので深くは話さないが、ざっくり言うならば、とある「ひとつのこと」がラストに繋がっていた。「エッセイで伏線回収!?まじか…!?」と、シゲさんに「ぎゃふん」と言わされた。流石である…🤦‍♀️


 また、このエッセイを読んでいて気になることもたくさん出てきた。

 貴船神社に行ってみたい、渋谷を舞台にした小説『恋文』(著者:丹羽 文雄)も読んでみたい。「ア-ティチョ-ク」という言葉の意味も、『ジュ・テ-ム・モワ・ノン・ブリュ』という映画もしくはヒットソングもどんなものか、と気になっている。

 このエッセイのテ-マは『旅』であるが、私は「シゲさんと一緒に旅をした」というよりも「シゲさんの心の中」を旅させていただいた気持ちになった。素晴らしい旅をさせてくれてありがとう。

(最新アルバム『STORY』のコンセプトのひとつが『NEWSメンバーの心を旅する』だが、これは奇遇なのだろうか?たまたま?)


 よく人生を「旅」に例える。一方で、どこかへ行き、その土地のものを食べ、その土地にしかない景色を見て、刺激を受けるのも「旅」である。どうかこれから先、シゲさんが旅するその「ふたつの旅路」が素晴らしいものであってほしい。  

 

fin.